2012年5月6日日曜日

【パトリオット】フランシス・マリオンとバナスター・タールトン[1]: 映画DVDブルーレイを52倍楽しむ方法


 『パトリオット』はアメリカ独立戦争を舞台にした映画。独立戦争はアメリカの植民者とイギリス本国との戦い。アメリカ大陸軍の立場にたてば、赤服のイギリスは敵役になるため、ハリウッド映画では取り上げにくいテーマになる。日本人やドイツ人のように、イギリス人を安易に敵にすることは難しいからだ。監督のローランド・エメリッヒはドイツ人なので、イギリス人を敵とする映画にはそれほど抵抗がなかったに違いない。

 
 独立戦争は、世界に覇権を広げるイギリスの拡張に一度ストップをかけた戦争で、1775年から1783年まで続いた。ただし、イギリスとアメリカはこれから約30年後にもう一度戦火を交える。米英戦争である。イギリスはアメリカ以外の植民地を拡大し収奪を重ねて覇権を拡大した。のちに南アメリカでボーア戦争を始めて多大な痛手を被り、第一次大戦で致命傷を受けて覇権国家の地位から転落していく。


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 『パトリオット』はサウスカロライナが1776年3月15日にイギリスからの独立を宣言した日あたりから始まる。戦争の原因はイギリス本国の植民地に対する課税の強化にある。イギリスとしてはアメリカ大陸にある植民地を守るために軍隊を派兵しており、莫大な戦費が必要となった。そのためアメリカ植民地での課税を強化しようとしたのである。増税は主に少し前の植民地戦争、フレンチ・インディアン戦争のツケらしい。

 さて、『パトリオット』の主人公ベンジャミン・マーティンのモデルは、アメリカ独立戦争時の中佐であった「フランシス・マリオン」だと言われている。モデルとなった人物は他 にもいる。Wikipediaの「フランシス・マリオン」の項目にはフランシス・マリオン以外に

アンドリュー・ピケンズ
トーマス・サムター
ダニエル・モーガン

が上げられている。マリオン、ピケンズとサムターはいずれもナサニエル・グリーン麾下の民兵の指揮官である。DVDの特典メニューにある「独立戦争の真実」でも、モデルとしてサムター、ピケンズ、マリオンの三名を紹介している。


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 敵役のウィリアム・ダビントン大佐は、ジェイソン・アイザックスが見事なまでにはまり役だった。モデルとされているのは、イギリス軍のバナスター・タールトン中佐。タールトン中佐はサウスカロライナでマリオンの捜索を任じられていた指揮官である。神出鬼没のマリオンを、タールトンは一度も捕まえることも、戦闘で破ったりすることもできなかったという。

 タールトンと戦って一度破れたのは、サウスカロライナ軍の将軍だったサムターである。タールトンの竜騎兵(火器を持った騎兵のこと)隊を完膚無きまでに破ったのは、ダニエル・モーガンだった。これをカウペンスの戦い(1781年1月17日)という。


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 また、タールトン中佐は捕虜になった大陸軍の兵士を虐殺したワックスホーの虐殺(1780年5月29日)の当事者として知られている。ワックスホーの虐殺では百名を越える大陸軍の兵士が捕虜のまま殺された。この無慈悲で非道な事件をきっかけに、イギリス軍への反感が増大し大陸軍の支持者が増えていく。映画でも描かれるように、タールトン中佐の高圧的で残虐な「北風」行為は、アンチイギリスの声を大きくした。アメリカで王党派(イギリス王に忠誠する一派)の軍を組織し独立派と対抗させようとしたイギリスの意図は、これによって打ち砕かれていくのである。

 なお、ローランド・エメリッヒは多少イギリスに配慮したよう� �、イギリス軍すべてを悪役にするのではなく、ダビントン大佐一人を悪役にしたてあげた。ダビントンのモデルとなるタールトン中佐は商人の出で、生家は奴隷貿易を稼業としていた。戦争が終わった後、イギリスのリバプールに帰って議員となり奴隷貿易廃止に反対した。当時のリバプールは奴隷貿易でにぎわっており、彼はイギリスのリバプールでは「英雄」だった。後に大将にまで登り詰め、準男爵を受爵されている。


 マリオンは1732年の生まれなので、独立戦争でチャールストンが陥落した1780年(5月12日)では四十代後半であった。メル・ギブソンが演じるベンジャミン・マーティンはもう少し若い感じだろうか。ちなみにタールトンは1754年生まれなので、当時は26才くらいである。



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